02.物理用語・物理の考え方 - 高校物理
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今回の目標
- 物理を学習する上で必要な言葉の意味を知る
- 近しい意味の言葉を区別できるようにする
- 単位の重要性を理解する
今回の範囲
- 物理基礎:p.--
- 物理:p.--
- リードα:Q.--
2.1 数学用語
本題の物理用語に行く前に数学用語です。
変数と定数
変数
中身の数字が変化する文字のことを変数といいます。
\[f(x)=x\]
でグラフが右上がりの直線になれば\(x\)は変数です。
数学では\(x, y, z, ...\)など、物理ではその物理量の文字などを使います。
定数
変数に対して、中身の数字が変化しない文字のことを定数といいます。
\[c=const.\]
と書くと\(c\)は定数という意味になります。
数学では\(a, b, c, ...\)など、物理では\(k\)や、その物理量に数字を付したもの(\(T_0, v_0, ...\))などを使います。
関数
数学で習う関数です。
数学では\(f(x),g(x),h(x),...\)を使いますが、物理ではその関数の表す物理量に応じて文字を変えます。
例えば、時間に応じて変化する位置\(x\)は\(x(t)\)、速度\(v\)は\(v(t)\)と表現します。
2.2 物理用語
場所
物理はもののことわりと書くだけはあり、物体の動きについての法則を扱います。
そのうえで物体がどこにあるか表す手法は非常に重要です。
座標
数学で用いる\(xy\)座標などと同じです。
絶対座標、位置とも言えます。
文字は\(x,y,z\)を使うことが多く、単位は\(m\)を使います。
1次元なら数直線(変数は\(x\)のみ)、2次元なら平面(変数は\(x\)と\(y\))、3次元なら空間(変数は\(x\)と\(y\)と\(z\))です。
\[(x,y,z)=(0,0,0)\]のように表せます。
座標についてはベクトルの回で詳しく扱います。
変位
場所に関する変化量のことを指します。
相対座標(ちょっと違うかも)とも言えます。
位置が\((2,1,-1)\)、変位が\((1,-1,1)\)なら、移動後の位置は\((3,0,0)\)になります。
位置と区別するために\(Δx\)や\(δx\)(どちらも「デルタ」x)と書く場合があります。
これについてもベクトルの回で詳しく扱います。
時間
動きを扱う以上時間経過が絡んできます。
文字は\(t,T\)(time)、単位は通常\(s\)(秒)です。
\(t\)が変数、\(t_0\)が開始時刻、\(t_1,t_2,...\)がひとくくりの運動が終わった時刻などに使われる慣習があります。
問題に触れていけばいずれ分かることなので今は分からなくても大丈夫です。
速さ
動くのだから速さも不可欠です。
速さ
速さは(向きなどが関係ない絶対値の)速さです。
「早さ」とは違います(「早さ」と「速さ」では日本語的に意味が異なります)。
絶対値量(スカラー)なので必ず正の値です。
文字は\(v,V\)(velocity)、単位は通常\(m/s\)(メートル毎秒)です。
\(v_A\)は物体Aの速さ、\(v_B\)は物体Bの速さというように使われる慣習があります。
\(v_A\)は地点Aでの速さ、\(v_B\)は地点Bでの速さというようにも使われます。
速度
えっ、速さと速度って違うの?!と思いますよね。
実は違います!!!
速度はベクトルです。
つまり、大きさと向きの両方の要素をもっています。
そのため、+方向と反対方向の速度をもっていれば、負の速度になります。
文字は\(v,V\)(velocity)、単位は通常\(m/s\)(メートル毎秒)です。
速さと区別して、\(\overrightarrow v,\overrightarrow V\)と書く場合もありますが、あまり見かけないですね。
むしろ速さのほうを\(|v|,|V|\)と書く方がよく見かけます。
大学ではベクトルを太字で記述するので、速度は\(\bf v,\bf V\)と記述します。
絶対速度・相対速度
絶対速度は止まっている人から見た速度、相対速度は動いている人から見た速度、です。
例えば踏切待ちで通過する電車をながめるのと、電車に乗っていて、走行中にすれ違う対向車両をながめるのを比較してみることとしましょう。
それぞれ同じくらいの速さで走行していたとすると、電車に乗っている時の方がすれ違い終わるまでの時間が短いです。
これは自分が移動しているからですよね。
絶対速度は踏切待ちで通過する電車の速度のことを指し、相対速度は走行中の電車の中から見た対向車両の速度を指します。
絶対速度だけで考えることもできますが、電車に乗っているときのように視点が移動しているときは、相対速度を考えた方が分かりやすいですよね。
瞬間速度・平均速度
運動を観測していく上で、必ずしも一定の速度で移動してくれるわけではありません。
例えば、短距離走では誰もが最初からフルスピードで走りたいですが、それは不可能です。
どうしても速度0からだんだんとフルスピードに近づけるしかありません。
これは車などの機械でも同じです。
どこかに出かけるときには所要時間を知りたくなりますよね。
時間を求めるには距離と速度が分かれば求められます。
距離は簡単に求められますが、速度はどうでしょうか。
信号待ちで時々速度0になったり、そこからまた加速したりと安定しないのでは計算になりません。
このような1秒1秒の瞬間の速度を切り取ったものが瞬間速度です。
瞬間速度の平均を取れば、この例の計算は可能になります。
小中学校でやってきた計算はこの平均速度を使っていたということになります。
平均速度で計算ができていたのは扱っていた運動が等速直線運動だったからです。
物理でも平均速度は使いますが、そのうち等速でない運動も扱います。
その場合は加速度を計算に取り入れる必要があります。
加速度
加速度は速度が大きくなる速度です。
加速度は物理法則の面でも、技術の面でも重要な要素です。
加速度の大きさは力に直接影響を与えるので、人間や物体にもとても影響を与えます。
電車や車に乗っていると体が前に引っ張られたり、後ろに引っ張られたりしますが、これは速度による影響ではなく、加速度による影響です。
速度をより早く大きくしようと思うと加速度は大きくなり、体はより後ろに引っ張られます。
速度をより早く小さくしようとすると加速度はマイナス方向に大きくなり、体はより前に引っ張られます。
この例で分かるように加速度も速度と同じベクトルで、大きさと向きをもちます。
速度が大きくなれば加速度は正、速度が小さくなれば加速度は負です。
文字は\(a\)(accelaration)、単位は\(m/s^2\)(メートル毎秒毎秒)です。
もちろん速度とは単位が異なります。
重さ
物体の運動には質量も関与します。
重さ
より感覚的で身近な表現が重さです。
これは体重計やはかりにのせた時に計測できる値のことです(教科書的にはばねばかりの計測結果のこと)。
そのため、無重力状態ではなんと物体の重さが0になります(?!)。
それでも無重力状態から重力がある状態のところに戻せば重さを取り戻しますよね。
じゃあ場所によって体重が変わったりしてるのか?!というとそうではありません。
物体には固有の重さがもともとあって、それがその場所の重力の強さ(※重力加速度の大きさ)によって計測される重さに変化を及ぼしているのです。
普段重さの単位として\(kg\)や\(g\)を使いますが、実は物理においてはちょっと間違っています。
この例で分かるように、重さで重要なのは地球に引き寄せられる力の大きさなんですよね。
無重力状態では体重計は使えないですし、月では\(1/6\)の体重が表示されてしまいます。
体重計などは地球で使うことを想定して、体重計にかけられた力から体重を計算で割り出しているんです。
その証拠に力の単位は\(N\)(ニュートン)で、\(kg\)と同じ単位系(?)ではありません。
場所によって値が変化してしまう性質から通常の物理学ではあまり使われません。
質量
先ほどの例で出てきた、物体がもつ固有の重さというのが質量です。
これは天秤(てんびん)をつかうと計測できます。
\(kg\)という単位は人間が「この物体の質量を\(1kg\)とする!」として決められている単位です(\(m\)もそうです)。
その質量が決められた物体と計測したい物体を天秤にそれぞれ乗せることによってすべての物体の質量を求めることができます。
文字は\(m\)(mass)、単位は\(kg\)を使います(\(g\)はあまり使わないので単位に注意!)。
力
文字は\(F\)(force)、単位は\(N\)(ニュートン)を使います。
詳しくは力学編で扱います。
2.3 単位の重要性
単位が違う物理量は比較できない!
例えば、\(5m/s\)と\(4kg\)どっちが大きい?という問は成立しません。
なぜならこのふたつの物理量は単位が異なるからです。
これだけ見るとこんな間違いはしないような気がしますが、これだとどうでしょう。
\(v\)と\(m\)どっちが大きい?という場合です。
これは\(v\)の単位、\(m\)の単位が同じになって初めて比べられます。
\(v=5\)、\(m=4\)が与えられているだけでは、間違って比べてしまいそうです。
大量の公式に惑わされるな!
物理では先人たちが見つけ出した物理法則を公式として学びます。
当たり前ですが、公式も右辺と左辺の単位は同じになります。
例えば、有名な公式、運動方程式は
\[F=ma\]
単位で書き表すと
\[[N]=[kg][m/s^2]\]
となります。
※単位\([N]\)は\([kg・m/s^2]\)と等価です。
計算している途中で、右辺と左辺の単位違うな、と思ったら計算ミスや公式の書き出しミスを疑いましょう。